パン生地のこね具合を見極めるポイント!ミキシング中の"4段階"を解説

こんにちは!製パン科学研究家の"BAKE FIRST"です(・ω・)ノシ

パン作りでパンの出来栄えを大きく左右する工程「ミキシング」。

作るパンに応じてこね具合を変えることで様々な食感を作ることができますが、その見極めの目安として製パン理論の分野ではミキシング中のこね具合を主に4段階に分けて考えます。

これらを知っておくことで、いま目の前にある生地がどういう状態で、あとどれくらい捏ねれば良いのか、といった判断がしやすくなります。

今回は、ミキシングの本来の目的とミキシング中の4段階について解説します。

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ミキシングの目的とは?

ミキシング初期

捏ねることはあくまで手段であって、捏ねること自体が目的ではありません。

ここをはき違えてしまうと、捏ねるパン作りと捏ねないパン作り二つのレシピに出会った時に、その意図が分からなくなってしまいます。

では、ミキシングの目的とはいったい何なのでしょうか?

順を追って解説していきます。

材料を均一に混合すること

これはどんなパン作りにおいても必要となってくる目的。

極端な話、水に粉を浮かべたままでは生地は形成されませんし、当然パンにもなりません。

細かく言えば、パン酵母が均一に混ざらず一か所に集中してしまうようなことがあれば、その生地は発酵具合が場所によってバラバラで、非常に不均一かつ不安定なパン生地となってしまいます。

パン作りには小麦粉と比べてたったの1%以下の配合量しか使わない材料も多くあります。そういう微量配合ものは特に材料の均一混合を意識しないと、安定性のないパン生地となってしまいます

また、生地全体の水和も重要です。

粉がしっかり水と馴染むのはもちろん、砂糖や塩など他の材料も水にしっかり溶けこむことで、生地全体が均一化し安定したパンが作れるようになります。

生地に空気を混入させる

生地空気混入
生地に空気を混入させることは、パン作りにおいて様々な効果をもたらします。

グルテン酸化

パン生地の骨格であるグルテンは力を加えるだけではほとんど強化されません。酸素と結びつくことで丈夫な骨格となります。

実際に無酸素ルームで小麦粉生地をミキシングするという実験をした製粉会社の研究室によると、有酸素ルームで捏ねた生地に比べて生地の発達が著しく少なかったとのこと。

生地に空気を混入させる意識で捏ねれば、その分より多く酸素を生地に混入できます。

それによってグルテン酸化も促されるということです。

酵母菌の呼吸促進

パン生地内部で酵母菌は発酵だけでなく、呼吸という活動もします。

発酵と呼吸は化学式で見ても別々の現象であり、どちらもブドウ糖を分解することは同じですが、同じ糖分量でも生成される炭酸ガス量とエネルギーは呼吸の方が圧倒的に多いのです。

実際には捏ねないパン作りであっても、元から小麦粉に付着している酸素や混ぜる際に混入する酸素もあるので全く呼吸しない生地を作ることは出来ませんが、それでもミキシングでの空気混入が多ければその分呼吸が促進されます。

自家製酵母の種起こしで一日数回混ぜたりするのも酸素を酵母菌に与えるためです。

酵母菌と呼吸について詳しくはこちらの記事をご確認ください。

paopao-bakefirst.com

 

適度に粘弾性をもつ生地にする

パン生地 粘弾性

どんなに発酵力の強いイーストを使ったところで、発酵で生成されたガスを保持できなければ意味がありません。

穴の開いた風船はいくら膨らませようと膨らみませんし、逆に丈夫すぎて硬い風船は驚異の肺活量でもない限りは膨らませるのが難しいですよね。

パン生地も同じで、しっかりガスを保持できうる力(弾性)は必要ながらも、自由に伸びていく性質(粘性)も必要です。

捏ね続けることで、生地のたんぱく質「グルテン」の網目構造は薄く伸ばされ幾重にも重なり続け、生地の弾力も伸び(伸展性)も向上します。

ミキシングで変わる生地の状態の4段階


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第一段階

 ピックアップステージ(つかみどり段階)と呼びます。

ミキシングの最初期の状態で、この時はまだベタベタとしていて材料の混合具合は不均一。

そして、生地中のグルテンがしっかりと繋がっていないため、つかみどりすることで簡単にちぎれてしまいます。

粉と水をゴムベラでサッと混ぜ合わせただけの状態がまさにこの段階です。

第二段階

クリーンナップステージ(水切れ段階)と呼びます。

この段階では生地としての繋がりが生まれ、つかみどりしても簡単にちぎれることはありません。

粉が水をしっかりと抱き込んでいますが、グルテン形成はまだ甘く、網目構造はまだ粗く厚い膜となっています。

ミキサーを使用している場合はボウルがあらかたキレイになります。 ボウルがキレイになる=Clean Upするという意味からクリーンナップという呼び方になっています。

(クリーン・アップでもいいですが、英語読みするとCleanupと繋げて読みますからクリーンナップと書いた方が発音に近い)

手ごねの場合でも、ピックアップステージの生地ほど手にべっとりと生地が付くようなことはありません。(高加水など元からべたつきやすい生地を除く)

ですが、まだ生地の表面は滑らかとは言えず、薄く伸ばそうとしても破れてしまいます。

第三段階

 ディベロップメントステージ(結合段階)と呼びます。

この段階に入った生地は、ツヤと滑らかさが出てきます。

グルテン組織の形成もかなり進んで、緻密な網目構造となっています。

ミキシングの段階の中では一番弾力が強い

ミキサーを使っている場合、生地がボウルに叩きつけられてバシバシと乾いた音がします。

この段階に入ってくると、まだ抵抗はありますが生地が薄く伸びることができます。

第四段階

ファイナルステージ(最終段階)と呼びます。

生地のツヤと滑らかさが最高潮に達し、ディベロップメントステージの時にあった弾力が少し緩み、とても薄く滑らかに伸びる生地となります。

手ごねではここまで捏ね上げるのは至難のワザで、どんなに良くても第四段階の手前くらいまでしかたどり着けないことが多いです。

ミキサーを使っている場合、ボウルに叩きつけられる音がやや湿った感じに変わります。

手ごねしかやったことのない人はこの段階の感覚がわからないかもしれませんが、ミキサーで捏ねていると第三段階から第四段階に移るとそのツヤ感と滑らかさが一気に良くなることが実感できます。

(おまけ)第五段階

ファイナルステージに突入後もミキシングを継続することで、いわゆる「オーバーミキシング」と呼ばれる捏ねすぎの状態へと変わっていきます。

第五段階はレットダウンステージ(麩切れ段階)と呼びます。

生地の粘着性が強まり、弾力が弱まっていきます。生地の膜は非常になめらかで薄く作れますが、丈夫さに欠けるためすぐ破れてしまうでしょう。

軽度であれば冷蔵庫で生地を引き締めることで多少の改善は見込めるようです。

強力粉生地を手ごねで作る場合、第五段階までもってくるのは難しいです。そのため捏ねすぎを怖がって控えめのこね具合にする必要はありません。

薄力粉や準強力粉の生地をしっかり捏ねて作るようなレシピの場合のみ注意すればいいでしょう。

(おまけ)第六段階

ブロークンステージ(破壊段階)と呼びます。

ここまでくると生地の弾力はほとんどなくなり、ダラダラと垂れ落ちるようなある種の流動性のある生地になります。

まとめ

ミキシング中のこね具合の4段階を知っておくことで、パンによって違うこね具合の作り分けもイメージしやすくなります。

ぜひ手ごねで作る際もこれらを意識してやってみてください!

 

2023/05/12

by BAKE FIRST(製パン科学研究家)