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しっとり感が長く続く「湯種法」とは?消化に良いもちもちパンが作れるその原理を解説

みなさん、「湯種法」ってご存じですか?

最近ではスーパーの袋入り食パンですら「湯種配合」と書かれるくらい広く浸透している製法なので、知っている方も多いかと思いますが、

「湯種ってそもそも何?」

「なんで湯種を使うとしっとり感が長続きするの?」

「しっとり感以外で湯種のメリットは?」

「湯種のデメリットは?」

などなど、深いところまで理解していますか?

知識を得て理解することで、作りたいパンのイメージをより明確に描くことができるようになります。

今回は、そんな湯種法について解説します!

 

 

湯種法とは?

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湯種法とは、生地に湯種を配合して作る製パン法のことを指します。別名「湯ごね法」とも呼ばれ、日本独自の製パン法です。

その湯種とは、小麦粉に同量(またはそれ以上)の熱湯を混ぜたもののことで、これを配合することで焼きあがったパンのしっとり感が長く続いたりモチモチ感が演出できるため、結果としてより美味しいパンが出来上がります。

 

そして、多くはパンの配合に使う小麦粉の何割かを湯種用に使います。

例えば強力粉100%の配合レシピを湯種パンにする場合は、10%を湯種用につかって残りの90%を本生地作りで使用します。湯種は本生地作りの際に他の材料と一緒に投入してミキシングしていきます。

そして湯種に使う粉は多くても20%まで、それ以上は作り方にもよりますがパンのボリューム低下や生地の扱いづらさが著しく目立つようになります。

 

ここに、湯種食パンの配合例をご紹介します。

 

配合例①

材料 BP(%)
湯種  
強力粉 20
熱湯 22
本生地  
強力粉 80
上白糖
食塩
スキムミルク
インスタントドライイースト 0.87
53
無塩バター 3
ショートニング
合計  190.87

 

配合例②

材料 BP(%)
湯種  
強力粉 20
上白糖
食塩
熱湯 40 
本生地  
強力粉 80 
上白糖
スキムミルク
インスタントドライイースト 0.87 
42 
無塩バター
ショートニング
 合計 199.87

 

 

湯種法のレシピでは、このように湯種と本生地で欄が分かれています。

※②はかなり合計吸水多めの配合ですが、これには理由がありますので最後まで読まずに作り始めないでください。危険です!(笑)

 

湯種の作り方

広く知られている簡易的な作り方

先ほど紹介した配合例①が広く知られている作り方での簡易湯種です。

やり方はとても簡単で、ぐつぐつ沸騰するくらい温めた熱湯を粉にかけて素早くよく混ぜるだけ。そのあとは冷蔵保存で一晩寝かせます。

粉よりも数パーセント多めに熱湯を使う方が混ぜやすいです。

水分量でいうと、ドロドロになるのかと思われますが、粉のでんぷんが熱でα化することでより多くの水分を吸うため、べたつきはしますがまとまりのある物性となります。

ご家庭でのパン作りはもちろん、パン屋さんで湯種を手作りするお店でも安全性や簡便性からこの方法を採用しているところは多いはずです。

あまり知られていない本格的な作り方

湯種法についてのデメリットを説明している専門書の中には、

「作業に危険が伴う」

と記載があるものが稀に見かけられますが、上記の方法しか知らなかった私は

「こんな作業のどこに危険が…?いくらお店で作る量が増えたからと言って」

と疑問に思った時期がありました。

 

しかし、より湯種の完成度を高め効果を最大限に引き出す製法がありました。

配合例②で使われる、業務レベルで紹介されている作り方で説明します。

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  1. ミキサーボウルの下にガスコンロを設置。
  2. ミキサーボウルの中にお湯を入れ、フックも中に入れた状態で火をつけ沸騰するまで温める。(フックを同時に温めるのは、冷たいフックでミキシングすると熱が奪われるため)
  3. 温まったフックを取り付け、粉を投入して加熱しながらミキシングする。この時ミキサーボウルは遠火で加熱する。
  4. 粘りが出てきたら終了。

この方法を用いることで、湯種に使う粉のα化率が極めて高くなり、湯種パンの特徴が最大限に活かされます。

そもそもα化とは?

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α化(糊化)とは、でんぷんを加熱することにより、水を吸って糊状になることをいいます。

でんぷんをα化させることで、

  • 食品の保湿力が高まりしっとり感が向上・長続きする。
  • 消化が良くなり、胃腸に優しいだけでなく噛めば噛むほど甘さが引き立つ。

といった効果が得られます。炊いたお米やおかゆなどはでんぷんがα化している食品のわかりやすい例でしょう。

 

実は簡易的な製法だと、でんぷんα化が不十分?

最初に紹介した簡易的な作り方だと、粉の温度が25℃だと、98℃の熱湯を混ぜても温度は「(25+98)÷2=61.5℃」にしかなりません。寒い日はもっと下がります。

そして、混ぜるのに時間がかかるほどに生地は室温に影響されて更に下がります。

 

これが何を意味するかというと、60℃程度の温度ではでんぷんが十分にα化するには温度が低すぎるのです。

 

下記の記事でも生地温度によるでんぷんの変化について解説していますが、でんぷんのα化には最低でも70℃は必要です。

paopao-bakefirst.hateblo.jp

55~65℃はでんぷんが水分を吸って膨らむ「膨潤」という作用が起こり、でんぷんの外膜がふやけます。

これはα化の準備段階でしかありません。

そこから更に加熱が進み、70℃からようやくでんぷんの外膜が破れ、中のアミロースやアミロペクチンといったでんぷん物質が流れ出します。ここまで来て初めて「α化(糊化)した」と言えるのです。

 

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こう見ると、最初に説明した簡易的な湯種の作り方ではでんぷんが全くα化していないのかと思ってしまいますが、もちろんそういうわけでもありません。

当然、粉に熱湯をかけた時に、最初に熱湯と触れ合った部分の粉は98℃という高温を直接受けることになります。

人の手の温度は32℃くらいだからといって、(32+98)÷2=65℃なら一瞬なら触って大丈夫かな、なんてことはありませんよね。普通に火傷します。

この計算式はあくまで同量の物同士が均一に混ざりあった場合に全体が何度になっているかを表しているものですので、最初に触れ合ったものが高温の影響を受けないわけではありません。

ですが、混ぜれば混ぜるほど全体の温度は均一化されていき、しまいにはそれ以上でんぷんがα化できない温度にまで下がってしまうのです。

 

実際、私は家で鍋を使って湯種を加熱しながら作ったことがありますが、作りながら炊いたお米のような香ばしさがして、ほんの少し透明度が増した種ができます。

そして、粉の倍量の熱湯を使ったにもかかわらず、ドロドロにならずにまとまりのある種となりました。(加熱中の水分蒸発もあると思いますが、でんぷんがより多く水分を抱き込んだ面もあるでしょう)

そして、その湯種を使って作ったパンは、簡易的な製法のものよりも湯種効果が顕著に現れており、驚愕しました。

 

このように、効果の高い湯種をお店で大量に作るにはそれなりの手間と危険が伴うため、国内の製粉メーカーである奥本製粉ではそのニーズに応え、既製品の冷凍湯種やレトルト湯種が製造販売されているようです。

これからも他のメーカーから様々な湯種が開発されて、日本独自の製パン法である湯種法がより発達することを個人的には期待しています。

 

湯種法のメリット

湯種法でパンを作ることの食べ物としてのメリットは、先程もちらっとお伝えしましたがこのようなことが期待できます。

  • しっとり感が向上し、それが長続きすることで美味しさの日持ちが良くなる
  • モチモチとした食感が得られる
  • 消化が良くなり、噛めば噛むほど甘味が際立つ

これらはパンのでんぷんα化率が高くなることで得られる結果ですが、この結果を導くための方法で「高加水(多加水)製法」というものもあります。

これは、通常よりも多い水を生地に配合する製法なのですが、生地はとてもべたつきやすく柔らかく、手粉を多く必要とし難易度がかなり高いです。

ですが湯種法を使えば、結果的には同じくらいの水分量で仕込んでいても、湯種法の方が生地に硬さがあるため比較的扱いやすく、そこまで難易度は高くないと言えるでしょう。

言い換えるならば、湯種法は「わりと作りやすい高加水パン」と言えるかもしれません。

 

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なぜ湯種法だと生地が硬いの?

高加水パンはただ水を多く入れただけなので、生地に含まれる水分の多くが「自由水」といって、どの物質にも吸着していない自由に動ける水分となっています。

湯種法の場合は、湯種の中では多くの水分が粉のでんぷんに吸着し抱き込まれているため、高加水パンにくらべて自由に動ける水分が少ないと言えます。

だから、配合のトータルでみると同じくらいの水の量を入れていても、湯種法で作る方が生地は硬さがあるのです。

また、湯種は高温に晒されていますから、粉のグルテンが熱で変性してしまいます。

結果、生地全体で機能するグルテン量は少なくなり、柔軟性に欠けてしまうことで硬く感じることにもつながります。

湯種法のデメリット

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湯種法でパンを作る場合、このようなデメリットがあります。

  • パンのボリューム低下
  • 生地がデリケートになる

パンのボリューム低下は、湯種に使った粉のグルテンは熱で変性してしまい、生地全体で機能するグルテンが少なくなることで、ガス保持力が弱まり窯伸びも悪くなるために起こります。

極端な例えになりますが、強力粉100%のうち湯種に使う粉が10%なら、強力粉90%分の力しか発揮できないと言えばわかりやすいでしょう。

さらに、それは生地の扱いやすさにも影響を及ぼします。

ちゃんと機能するグルテンが少ないということは、柔軟性の低下を招き、生地に対する力加減に無理があると生地が傷みます

特に表面を張り込みすぎると生地が切れ、ちょっと汚い見た目に焼きあがってしまいます。

こうした力加減の勘所は、すこし気を使うところではありますね。

湯種に砂糖と塩を入れるレシピがあるのはなぜ?

これは、多くのお店では湯種を大量に作って一晩冷蔵で寝かせる際に、傷みにくくするために砂糖と食塩を配合しています。

ご家庭で作る湯種の量であれば、冷蔵庫に入れただけでもすぐに芯まで冷えるので傷むことはあまりないかと思いますが、お店ではそうもいきません。

一回に作った量が多ければ多いほど、しっかり中まで冷えるのに時間がかかります。時間がかかる分、30℃~40℃というカレーでも怖い温度帯の滞在時間が長くなります。よって傷みやすいと言えます。

そういった部分を考慮しての安全策として配合しているだけですので、特にこれが味に影響を及ぼすとかではないでしょう。

湯種を作る手間を省いて、簡単に湯種パンが作れる?!

奥本製粉という湯種のパイオニア的な製粉メーカーで、様々な湯種商品が製造販売されています。

その多くは業務用湯種製品なのですが、最近ご家庭でも簡単に湯種パンが作れるミックス粉が発売されました。

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「湯種粉末」というまた新たな湯種のスタイルを用いた製品で、私も半信半疑で買って試してみた感想をこちらの記事にまとめています。

 こういう商品がもっと広まって、日本独自の製パン法がより広く認知されるようになったらうれしいですね。

まとめ

でんぷんを事前にα化させた種を配合することに最大の特徴がある「湯種法」。

α化したでんぷんなら何でも効果あるよね?と、お店によっては粉を変え水分量を変え、温度を変え…と様々な湯種作りに挑戦されているところもあるようです。

私も以前、強力粉と薄力粉で湯種を作り替えたりしたことがありますが、確かに違いを感じることができました。

色々試してみて、それぞれの特徴をよく把握して、作りたいパンに合わせて使い分けができたらとても楽しそうですね♪

以上、湯種法についての解説でした!

 

 

byなおちゃん

 

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